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カーボンニュートラル社会実現にむけて

はじめに: 再生可能エネルギー及び温室効果ガス排出に係る基礎情報の収集及び現状分析の結果報告・公開

一般社団法人 日本再生可能エネルギー地域資源開発機構(以下「RDo」という)は、令和3年度から4年度にかけて、自治体における再生可能エネルギー導入目標設定に向けて、4つの自治体における地域内の温室効果ガスの排出状況や再生可能エネルギーの導入状況及び導入ポテンシャルについて現状分析を行うとともに、地域の自然・経済・社会的課題について調査し整理を実施した。

調査分析を通じて、地域で導入可能な再生可能エネルギー技術について絞り込みを行うとともに、中期目標として2030年度までの導入に用いる既存技術(スキーム)と、長期目標として2050年度までに実装が期待される革新的技術・ノウハウの動向調査も併せて実施した。

これらの調査結果から、2030年までの中期目標達成にむけて、地域が主体となって推進すべき再エネ事業分野と、再エネ普及にあたっての課題が明確になった。 RDoは、こうした社会的課題解決にむけては、エネルギー、金融、環境価値などの専門ノウハウ有する異業種企業に参集いただき、地域の脱炭素と、SDGsドミノを実現するスキームを研究開発する「Roof Plus社会還元プログラムメンバーズ倶楽部」を2023年5月創設するに至った。

「Roof Plus社会還元プログラム」は民間企業アライアンスによる具体的なソリューションスキーム案の開発と公開を目指すものである。

1.地域脱炭素(区域施策編): 地域に求められる再エネ導入戦略の考察

図(1)は、再エネ事業の取り組み主体別に見た俯瞰図である。

象限 (A):
地域の再エネ導入戦略策定にあたり、再エネ価値が地域に残らないFIT型再エネであり、2030年にむけては対象外。
大手エネルギー会社が主体となって開発をすすめる同分野は、地域における2050年以降(FIT終了後)の再エネ基幹インフラとして重要な施設となる。
象限 (B):
非FIT市場のうち、大手企業の屋根上に太陽光を設置する自家消費型再エネ事業は、大手エネルギー会社による積極的な開発が期待できるもので、自走市場とも言える。
象限 (C):
営農型太陽光や、ため池太陽光は、地域に委ねられた非FIT市場である。一方、事業の経済性ならびに、そもそもの系統混雑等の課題解決途上にあり、2030年度目標達成にむけては実現が難しい。
象限 (D):
自家消費型太陽光のなかでも、小規模・中小企業の屋根上への設置は、地域に委ねられた市場といえる。大手エネルギー会社の場合、 規模が小さく営業効率が悪い先ならびに、信用力脆弱な先は提案対象とされないケースが多い。地域に多い中小企業を対象とした自家消費型太陽光の普及は電力高騰化対策にも通ずるものであり、2030年目標達成にむけては、地域として独自の支援策を講じるなど、先行して取り組まなくてはならない市場といえる。
図(1)
1.地域脱炭素(区域施策編): 地域に求められる再エネ導入戦略の考察
  • ※1. RDo調査推定値(業務用45GWの内数) 
  • ※ 潜在市場 グリーン成長戦略(出典:電中研の分析にもとづく)

2. 地域脱炭素(区域施策編): 中小企業むけ自家消費型太陽光普及の課題考察

中小企業における自家消費型太陽光導入に際して、15年程度のファイナンスが調達できれば、「電気料金 >返済額」となるケースが多い。
すなわち、「再エネ電気」に代えることで、現在の電力料金高騰リスクを回避することが可能である。

自家消費型再エネ普及の最有力スキームは投資負担ゼロで設置できるオンサイトPPAである。

一方、PPA事業を展開する大手エネルギー会社の場合、設置先企業の信用力が、調査機関の評点50点未満の先は提案対象外とされるケースが多い。図(2)は、信用調査機関の信用ランク別企業数の分布表で、50点未満の先は企業数の80%程度であることから、ほとんどの中小企業はPPA提案がうけられない可能性がある。

図(2)
2. 地域脱炭素(区域施策編): 中小企業むけ自家消費型太陽光普及の課題考察※サンプル企業総数 22,592社。(サンプル業種)産業;金属、食品、繊維、化学、ガラス、民生;飲食、温浴・ホテル、スポーツ、事務所

3.地域脱炭素(区域施策編): 中小企業むけ自家消費型太陽光普及にむけて

中小企業への自家消費型太陽光の普及にむけては、地域の担い手と地元金融機関などが連携して「地域再エネ会社」を設立し、15年程度の実質的なファイナンスを提供し、「電気料金 >返済額」(電力高騰化対策)となるイニシャルレススキームを提供するうごきが活性化している。

自家消費型太陽光普及の最有力スキームは、イニシャル投資負担ゼロで設置し、
電力料金の削減効果のある長期イニシャルレススキームの提供である。

一方、PPA事業を展開する地域再エネ会社にヒアリングしたところ、設置先企業の信用力が50点未満の先のみならず、300kW未満の太陽光では営業効率の観点から提案自体を敬遠する傾向があることがわかった。

こうした事情を踏まえて、RDoが主宰する「社会還元プログラム」に参加いただいた民間企業各社によって、中小企業の信用補完型イニシャルレススキーム(図3)「Roof Plus」の研究開発を開始した。

図(3)

評点区分(信用評価機関) ファイナンス限度額
~45点以下 10,000,000円
46点~ 50点 15,000,000円
51点~ 55点 30,000,000円
56点~ 60点 50,000,000円
61点以上 50,000,000円

※信用力が高くても、営業効率の観点から300kW(50百万相当)未満は提案できない傾向

4.地域脱炭素(区域施策編)実行支援策: 中小企業むけ自家消費型太陽光普及スキームRoof Plusとは

中小企業における自家消費型太陽光導入に際しては、15年程度のファイナンスが調達できれば「電気料金 >返済額」となるケースが多いことから、社会還元プログラムメンバーズ俱楽部では、リース会社、損害保険会社、環境価値認証機関等の民間企業のノウハウを結集して、中小企業専用のイニシャルレス導入スキーム Roof Plus(図中①②③)の研究、開発を開始する。

Roof Plusは、太陽光設備をイニシャル投資負担ゼロで設置し、
電力料金の削減効果のある長期イニシャルレススキームである。
図(4)

Roof Plusは、信用評価機関の評点50点前後で、従来は自家消費型太陽光の普及が及ばなかった中小企業層への導入拡大を図るもので、信用補完の工夫と審査手法の簡易化などで具現化する国内初のスキームとなる。認証機関によるCO2削減量の定期報告サービス(図中②)もパッケージ化することで、社会的課題であるサプライチェーンの脱炭素化対策(図中④)にも対応する。

Roof Plus導入企業は、初年度からの電力料金削減効果のみならず、中小企業経営強化税制適用者には一括償却効果等の大きなメリットが見込めるため、地域脱炭素を加速する新しい支援策になることが期待できる。

図(4)
4.地域脱炭素(区域施策編)実行支援策: 中小企業むけ自家消費型太陽光普及スキームRoof Plusとは